ブックライター不足、という話題がXのライター界隈でいま盛り上がっています。
弊社では年間10冊ほどのブックライティング業務を受託していますので、思うところはたくさんありますし、少しは話もできる部分があるかと思いますので、ここでちょっと書いてみたいと思います。
確かに、とある出版社から初めて依頼を受けて(まだ個人の時で、その出版社は私のTwitterへの成果紹介の書き込みを見て連絡してきました)、取材を終えた直後に、立て続けに3冊の発注が来た時は、しみじみそれを実感しました。書き上げた、ではなくて取材した直後にです。それほどライターが居なかったのでしょう。その後、その会社からは2ヶ月に1本くらいのペースで受託しています。本当はもっと依頼したいらしいのですが、それ以上は私がパンクしてしまうということで、自主規制しているそうです。
このエピソードで私が言いたいのは、私のお仕事自慢ではなく、
「ブックライティングでは、一冊分を書く力だけでなく、一冊分のネタを”引き出す力”も大事である」
ということです。
よく、書けなくて投げ出すライターがいるという話を聞きます。これも業界あるあるですけれど、その場合、問題なのは筆力ではなく、材料が足りないから、ということも原因としてあるような気がします。
というのも、出版社は基本的な筆力が足りなさそうな未熟なライターには依頼はしません。それなりに雑誌やウェブメディアでの記事実績がある人に依頼しているはずです。そして、受けた方もそれなりに腕に自信があったから受けたと思いますし、取材も十分だったと本人は思っていたはずです。だけど書きはじめたら上手くいかない、書くことが足りない……。これは私もブックライティングを始めた時によく陥ったピンチなのですが、なにせ文字数が10万字近く必要なので、雑誌のような数千字レベルの仕事の感覚で取材していると、どうしても後半、ネタが足りなくなってくるのです。
あとスケジュール調整の難しさもあるでしょう。いざとなったら1日1万字書けばいいやとたかをくくっていると、〆切間近で泣きを見ます。確かに頑張れば1日に1万字ぐらい書けますが、それはあくまでも非常事態。それを10日間ぶっつづけでできるほど、人間の火事場の馬鹿力は持続しません。
以上のような、ネタ的&精神的スタミナ切れによって、「書けない」となるのではないでしょうか。もちろん、これはあくまでも私の勝手ば推察です。(ちなみに全面書き直しや追加取材はありますが、書けなくて投げ出したことはありません)。
なぜ、そのような事態に陥ってしまうのか。
それは、個人の筆力や能力だけでなく、特性の問題も大きいからだ思います。
陸上競技に例えると、雑誌などの記事の取材執筆とブックライティングは、中距離走とマラソンくらい違うと思います。陸上の世界でも、どちらもできる人はいると思いますが、基本的には他ジャンルの競技であり、トレーニング方法やレース中のペース配分も全然違うはずです。それなのに中距離しか走ったことがない選手がいきなりマラソンに挑戦しても、完走できないのは目に見えています。
そう考えるとまず必要なのは、距離に慣れさせることではないでしょうか。マラソンだって、最初は10キロ、20キロ、30キロと距離に慣れさせるのがセオリーのはずです。
とはいえ、自主トレ的に10万字の原稿を書いてみても、あまり意味はないでしょう。
やはり本番(仕事として受け、締切と編集者のプレッシャーの中で執筆すること)を経験しなければ、本当の経験にならないと思うのです。
(つづく)
byおやびん
※冒頭のイラストはこの記事を読ませてchat GPTに作成させました。
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